むかし。
クリスマスの日の朝のこと。
枕元に靴下とスーパーマリオ3が置いてあったことを思い出した。
靴下の中にスーパーマリオのカセットを無理やり入れようとしたのか、
その靴下は見た目にわかるほどに伸びていた。
ぼくはそのぶかぶかの靴下を履き、
朝の五時からファミコンの電源を入れる。
やがて母親が起きてきて、
トイレにいく。
トイレから出てきた母親は「はやいね」とぼくに言う。
ぼくはすべてをわかった上で「サンタがきたわ」とぶっきらぼうに言った。
「いい子にしてたら来年もくるよ」
卵をかき混ぜる音が聞こえてきて、
その音は直ぐにじゅうという腹ぺこのぼくにはとても刺激的な音へと変わる。
ぼくのクリスマスの記憶はいつもそこで終わる。
ぼくは24才になった。
今年のクリスマスはこっそり両親の枕元にプレゼントでも置いていこう。
あくまでこっそりだ。
カードもつけて、
こう書いておくんだ。
「いい子にしてたら来年もくるよ」
kibun